vol.13
現在、インストラクターとして活躍する“先輩”のみなさんは、これまでどんな勉強をしてきたのでしょう。専門分野や強みの見つけ方、学びの深め方、これからのあなたの学びの道しるべとなりますように、【学びの履歴書】をご紹介します。会社勤めはやりがいもあり、充実していたが、立場の変化によってストレスが強くなった
企業に勤務していた時、所属部署はいくつか変わりましたが、社内外のPRやコミュニケーション業務を担当していた期間が長く、やりがいもあり、とても充実していました。仕事で大変なことがあってもあまりストレスとは感じていませんでした。
ところが、企業内での立場が変化するに従い、いわゆる上司と部下との板挟み、会社から求められることと自分の信条とのギャップなど、本意ではない行動や言動をする機会が増えるにつれて、ストレスを強く感じるようになっていました。また、過剰な責任感によって、深夜まで業務をこなすうちに体調を崩すことも増えていきました。ストレスを強く感じるようになったのは、その頃です。その後、貧血や婦人科系トラブルを発症し、治療を始めました。アスリートとしての経験が今に役立っている
水泳やサーフィン、ロードサイクル、トライアスロン、エアロビクスなどフィジカルトレーニングを多数経験してきましたが、今は、ヨガやピラティス、ウォーキングをおこなう程度です。
水泳は中学の部活で大会などにも出場していました。サーフィンは学生時代から社会人になるまでやっていました。サーフィンをきっかけにして、ハワイやカリフォルニア、バリ島など旅をしました。
ロードサイクルやトライアスロンは社会人になってからです。一時期は、会社にもロードサイクルで通勤して、週末にはツーリングにも出ていました。
20代からフィットネスジムに通い、トライアスロンのトレーニングはトレーナーにもついていただいて、アイアンマンレースを目指していました。アイアンマンレースは、仕事とトレーニングの両立も難しくなり、体力的にも限界を感じて中断しました。
30代の頃は、夏はトライアスリートとして大会にも出場していました。冬はハーフマラソンや短い距離のマラソンなども数年にわたり出場していました。
競技も、順位はあまり関係なく、トレーニングしたり仲間と大会に参加することが楽しいからやっているという感じでした。人と競うということではなく、自分と向き合うことがとても楽しかったのです。
今まで行ってきたフィジカルなトレーニングは、ほぼ一人で練習するものがメインです。これは部活で水泳の練習をしていた当時から、今アーサナなどヨガを行っている時にも同じように感じることですが、プールで泳いでいる時、ロードでバイクを漕いでいる時、走っている時、外に向かう意識と内に向かう意識が働いていることに気づきます。特に、自己の限界を感じた時には自分と正面から向き合う瞬間がやってきます。たとえば、マラソン大会で苦しいと感じながら走っている時、いくつかの選択肢が内側に生まれます。立ち止まって休むこと、ゆっくりと歩きながらでも競技を続けること、ペースを保ちながら走ることなど、自分の意志が全てです。そんな時に自分との対話が始まり、どうしたいか、何を行うべきか、自然に内側から出てきます。
同時に、抜かれて悔しいと感じる、前を走っている人に追いつこうとしている時、感情や思考も様々にあらわれてきます。また沿道で応援してくださる人々や仲間、家族の声が聞こえた時には、まるで背中を押されたように元気をもらいました。ゴールが見えた時には、今までの苦しさや足の重さは忘れて、スピードは上がります。大会は競技ですが、私にとっては毎回が苦しくもあり、喜びに満ちた自分自身との旅でした。
自ら望んで挑むことにおいて、全ては自分の意志によるものであることは明白で、それが経験となる。ヨガを学び、伝えるにあたって、アスリートとしての経験は大変貴重なものだと感じています。
一つの手法にこだわることなく、良いことは何でもやってみるホリスティック医療で
人に頼ることの大切さを知る
20歳の頃、交通事故で重度のムチウチ症を患いました。手の震えや視力の低下、肩こりから腰痛など様々です。現在もわずかに後遺症は残っていますが、ほぼ症状は改善しています。
こうした体の不調の治療や治癒の過程で、多くの方から力をお借りしてきました。中でも、長くお世話になってきた産婦人科の医師が私に大きな影響を与えてくれました。現代医学のドクターでありながら、ホリスティック医療についても見識があり、生活指導や心構えなどトータルで患者をサポートしてくださる素晴らしい方です。そのドクターとの出会いによって、良くなろうとする意志の大切さ、心身共に健康的な生活とは何か、人の手を借りることの大切さなど、今でも実践していることの基礎を教えていただきました。
また、鍼灸・カイロプラクティック・アーユルヴェーダなどの治療を手掛けている先生に出会ったことにより、自分の身体への気づきの大切さや自らの身体を通して学びを深めていくことを教えていただきました。
このようにヨガやアーユルヴェーダを学び実践する上でも、数多くの素晴らしい師に出会うことができたことも幸運でした。
全ての教えは、必ずつながりがあります。ホリスティックというのは、一つの手法にこだわることなく、良いことは何でもやってみる、自分だけが頑張るのではなく、人に頼ることも大切にしています。
治癒の過程で実感したことは、身体的な回復は心に変化をもたらす。心身の相関関係です。また、様々な角度から心身へのアプローチを行うことによって生じる、相乗効果というものも実感しました。
あたりまえのことを行うことの難しさ。規則正しい生活、食事、運動など日々の行いを整えていくことは、簡単に思えることが意外に難しい。習慣を変えていくことは簡単ではないということは現在も実感しています。
本題からはそれますが、不妊治療を行った経験から学んだことも現在の大切な財産になっています。スタジオ・ヨギーではありませんが、ヨガとアーユルヴェーダを取り入れた妊活サポートを行っており、クライアントさんに対しても自分の経験を通した感情や意識の共有、アドバイスができます。数多くの実績も上がっており、人生無駄なことは一つもないと思える経験の一つです。
様々な人と、より密なコミュニケーションを目指して
ヨガ以外で学んできたことは、語学です。父が英語だけではなく中国語など多言語が堪能だったこともあり、語学への興味が高かったのだと思います。英語は、小学生の頃から学び始めました。洋楽ファンだったので歌詞の意味を知りたい、歌を覚えたいという音楽との関わりも大きかったと思います。当時から将来は海外で学んだり、様々な人とのコミュニケーションを取りたいとおぼろげながらに思っていました。
社会人になってからは、業務で英語を使う仕事にも関わっていたので継続的に学びながら、海外へライブを見に行ったりもしていました。インドネシア語も数年間にわたり学んだ言語の一つです。バリ島に何度も訪れ、現地の人々とより密なコミュニケーションを取りたいと思ったからです。今でも当時の先生とは友人としてつながっています。語学を学ぶことは、その国の文化や人を知る、知見を深めることでもあります。ヨガを学ぶ上でサンスクリット語に取り組んでいますが、これはなかなかチャレンジングな学びになっています。
その他、入社した部門が社員教育担当だったので、社員教育を行うための基礎トレーニング(コーチングやメンタリング)などコミュニケーションについて学びました。双方向のコミュニケーション、対象となる相手をよく見ること、よく知ろうとすることの大切さ。どのように伝えるかを複合的に考え、シンプルに伝えることの重要性を知ることができました。これは、今ヨガを伝える上で、とても役に立っています。長年学びたいと思っていたヒマラヤ伝統のヨガは、これからの指導の指針になった
今年参加した、インド・リシケシでのHimalayan Yoga Tradition Teacher Training Programは、長年学びたいと考えていたトレーニングです。スワミ・ラーマが伝えたヒマラヤ伝統のヨガであり、近年で最も学びたいと願っていました。特にリラクゼーションと瞑想を深く学ぶことができたと実感しています。
長期に渡るプログラムでもあり、なかなか実現できなかったのですが、ようやく参加できました。師との出会い、また12か国、20代から60代までと幅広い年代の参加者と共に過ごした時間は、異なった文化や言語、年代を超えてヨガを学ぶという刺激的で、豊かな経験となりました。
現在師事しているスワミジとの面談の中で、人との関わりにおいて生まれる対立、軋轢をどう考えていったらよいかという話になり「大きな川には支流がある、支流は本流へと向かう」ということにたとえて「支流=個」それぞれができることを行うこと、その先には「本流=ヨガ」へとつながるのだということを教えてくださいました。対立を感じた時に外へ向かう意識を内へと向け、雄大な流れに向かってそれぞれができることを行っていく、そう思うと安心感や意欲がわいてきました。
もう一ついただいた言葉に「focusing on yourself」があります。とにかく自分の練習、自分自身に集中していくことこそが大切だと、すべては「そこ」にあるのだということです。
とにかく実践あるのみ。Practice! Practice! Practice!
ヨガは人から人へと伝えられるもの
ヨギー・インスティテュートで印象に残っているトレーニングは、ベーシック・トレーニングコース(BTC)です。このコースに参加すると決めるまで約一年、スタジオ・ヨギーに通いながらヨガ関連の本を読み、ワークショップに参加していました。ヨガは人から人へと伝えられるものであり、本格的に学ぶためにはトレーニングを受講するのが一番良いのでは……と思うに至り参加を決めたのです。
仕事とは違って、利害関係のない「ヨガを学ぶ」という目的で集まった仲間が初めてできたのもこのトレーニングからです。今でもつながる仲間がいるということは心強いです。
その後本格的に学んだヨガのスタイル、アヌサラヨガでは、たくさんの素晴らしい先生達から学ぶことができました。中でもRoss Rayburnとの出会いは、ヨガインストラクターとしての心構えやスキルに大きな影響をもたらしました。スタジオ・ヨギー主催のトレーニングにも参加しましたが、その後海外でのトレーニングにも多数参加して、様々な国の仲間たちと学び、吸収したことは今私自身のインストラクションの基盤となっています。Rossから影響を受けた、シンプルでありながら深い教えをクラスの中で伝えるということ、身体とハートを結びつけることは、いつも心がけていることです。
ヨガを学び続ける中で、哲学的な側面は非常に重要です。タントラ哲学は、アヌサラヨガを学んでいた時からカルロス・ポメダ先生の教えを受け、学び続けています。現在学んでいるHimalayan Yoga Traditionもタントラ哲学をベースにしていることが大きなきっかけとなりました。
哲学は人類が脈々と築き上げてきた智恵。より良く生きる術を伝えてくれます。
どのように生き、どのように死んでいくのか、宇宙とは何か、自分とは何か……そこには私たちが抱く様々な思いや思考というものを科学的に、論理的に紐解いています。ヨガの実践を通して「自分を知る」、内なる旅をするわけですが、その道案内、ガイドが哲学だと思います。ハタヨガは身体を使ったヨガですが、なぜ行うのか、何のために行うのか……そこにも哲学的な背景があります。
今後、引き続き学びを深めたいと思っているのは、リラクゼーションと瞑想、そして哲学です。現代人は緊張を強いられることが多く、私自身もヨガを始めた当初はリラックスするのが非常に苦手でした。リラックスの大切さ、リラックスした状態で瞑想へと向かうと自然に時間が過ぎていきます。インストラクターとしても、リラクゼーションと瞑想をお伝えしていくことがとても大切なことだと思うからです。
名前 | |
アツコ | |
職業 | |
ヨガインストラクター、日本ヨーガ療法学会会員、日本アーユルヴェーダ学会会員 | |
学びの履歴書 | |
2006年 | ヨギー・インスティテュート ベーシック・トレーニングコース(BTC) |
2006~2008年 | Thai yoga body work (Jonas Westring) 1/2/3 アヌサラヨガ・イマージョンコース(AIC) Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
2007年 |
ヨギー・インスティテュート ティーチャー・トレーニングコース(TTC) 柳瀬式ウェルネスヨーガ・ティーチャートレーニング ヨーガニケタン ヨーガ教師養成講座(YIC) アヌサラヨガ・ティーチャートレーニングコース(ATT) (John Friend 35hours) ヨギー・インスティテュート ビューティ・ペルヴィス インストラクターコース |
2008年 | アヌサラヨガ・セラピューティック・トレーニングコース(TH) |
2008~2011年 | ヨーガニケタン ヨーガ療法士養成講座(YTIC) |
2009年 | アヌサラヨガ・ティーチャートレーニングコース(ATT)(Darren Rhodes 21hours) |
2010年 | アヌサラヨガ・マスターイマージョンコース (John Friend) アヌサラヨガ・ティーチャー・インテンシヴコース(TI) (John Friend 35hours) ヨギー・インスティテュート リストラティブヨガ・トレーニングコース(RT) |
2010~2011年 | アヌサラヨガ・イマージョンコース (Ross Rayburn 120hours) Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ |
2011~2012年 | アヌサラヨガ・ティーチャートレーニングコース(ATT) (Ross Rayburn/Amy Ippoliti) Level1,2,3 |
2011年 | アヌサラヨガ・ティーチャー・インテンシヴコース(TI) (John Friend 21hours) |
2012年 | Therapeutic Training (Ross Rayburn Yoga18hours) |
2013年 | Yoga Teachers Intensive 3days (Ross Rayburn Yoga 18hours) |
2014年 | Yoga Teachers Intensive 3days (Sianna Sherman 18hours) アーユルヴェーダ初級 Bheema Bhatta M.D. |
2015年 | アーユルヴェーダ中級 Bheema Bhatta M.D. |
2016年 | ヨギー・インスティテュート ヨガニドラー・トレーニングコース(YND) Therapeutic Immersion (Ross Rayburn Yoga 30hours) |
2017年 | アーユルヴェーダ上級 Bheema Bhatta M.D. |
2018年 | Himalayan Yoga Tradition Teacher Training Level1 |
企業に長年勤務、多忙な日々の中でストレスを抱え、心と体の不調和を感じていた時にヨガと出会い、自身の心や体と向き合うことの大切さを知る。 水泳やサーフィン,ロードサイクルをはじめ、トライアスロン競技,エアロビクスなどフィジカルトレーニングを多数経験。一方で、交通事故の後遺症や冷え性,婦人科系疾患に悩まされていたが、アーユルヴェーダやヨガ,鍼灸,カイロプラクティック,漢方などを組み合わせた治療によって回復。その経験から、ホリスティック医療への関心を高め、アーユルヴェーダ,解剖学やセラピューティック(治療的)の勉強を重ね、ヨガ指導に活かしている。 アーユルヴェーダやヨガの源であるインド哲学への探求、黙想や瞑想、リラクゼーション、アーサナのプラスティスを通して、ヨガを実践的に取り入れられるよう、学び続けている。 シンプルで、誰でもが気持ちよくヨガを行えることを第一に、心と体の両面からアプローチするクラスを心掛けています。より多くの方が日々の生活を前向きに、楽しく、健やかに生きることができるよう、師から授かった知識や経験、実践から生まれた智慧をシェアしたいと思い、ヨガとアーユルヴェーダを伝えています。 |