歌舞伎「マハーバーラタ戦記」を鑑賞した3人のヨガインストラクター、ヨガ講師でもある、ミヤビ先生、ケイコ先生、リー先生に、感想を寄せていただきました。2回目はケイコ先生。歌舞伎は学生時代に観た以来だというケイコ先生ですが、古典の物語を現代に解釈することが楽しいそうです。3人それぞれの物語の読み解き方をお楽しみください。
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内なる葛藤を、登場人物が、それぞれに象徴しているようヨガで有名なお話は「バカヴァッドギーター」ですが、マハーバーラタはその元のお話にあたります。「学ぼう」と思うと、腰が引けて、いつか・・・もしくは来世・・・と思ってしまいがちですが、奇想天外で面白い「物語」です。
日頃から、ドラマにするなら俳優は誰かな?と考えていました。歌舞伎での配役で印象的なのは、主役の菊之助さんが、カッコいいのは、もちろんですが、はじめて歌舞伎を見る私にとっては、ドゥルーヨーダナの中村七之助さん!美しい王女でした。原作は王女ではないので、恋に落ちることはありませんが、菊之助さん扮するカルナ(主人公)へ恋心を抱く王女は、慈悲の心に触れて、目覚めるというお話の展開はとっても面白かったです。
ドゥルヨーダナの父は盲目の王でした、物語は象徴的に描かれています。ここでは見えないことが心の目を閉ざしていることも象徴していて、悪政を働き、またその子供であるドゥルヨーダナもほんとうに大切なことが見えていないのです。
インドの空港の書店では今も「マハーバーラタ」が人気。
内なる葛藤。それは、内的な自分の多様な側面を、登場人物が、象徴しているように思えます。慈悲で世界を治めたいと思うカルナも、力(勇気や行動)で世界を治めたいと思うアルジュナも、自分のために世界を取り戻したいと思うドゥルヨーダナも自分の中の”ある側面”と捉えると、また物語の見方が変わります。
「自らを克服した人にとって自己は自己の友である。しかし自己を制していない人にとって自己はまさに敵のように敵対する」(バカヴァッドギーター 6章6岩波文庫)
ほんとうにこれでよいのだろうか? 何が最善なのだろうか? と日々迷うことはとても多くあります。戦いの時、友(仲間)とするのがドゥルーヨダナでは、違った方向へ行ってしまいそうです。日常で、そこまで悪意が心をはびこることはないのかもしれませんが、どちらも正しいと思えるような場面で、迷わず自分の役割を信じる力、行動する力、まわりをいい方向へと変えていけるような温かい心を常に友としたいものです。
寄稿:ケイコ / 編集:七戸綾子
ケイコ プロフィール
ヨガインストラクター。スタジオ・ヨギー ヨガディレクター。ヨギー・インスティテュート講師。ベーシック・トレーニングコース(BTC)、ティーチャー・トレーニングコース(TTC)、チェアヨガ・トレーニング(CY)、yoggy yogaトレーニングコースを担当している。
古くから住む人の多い羽田の近くで育つ。人付き合いが好きでおせっかい好きでもある。建築関係の仕事を経て今に至る。2004年studio yoggy公認インストラクター養成コースを修了。2005年ヤスシ氏に出会い、アヌサラヨガ、すべてを肯定的に見るタントラ哲学や、指導技術を学ぶ。現在は流派や、ジャンルを超えて学びを深めている。法人向けに気軽に椅子でできる「オフィスヨガ」やアプリ「音ヨガ」などのプログラム開発に携わり、2017年9月にリリースされたオーディブル作品(メンタルワークアウトジャンル)の制作をおこなっている。ヨガの哲学や練習は、コミュニケーションや自分の考えを整理する力になると実感している。クラスを通して、身体、心の癖、今に没頭することなど、いろいろな角度から自分について「あっわかった」と思う瞬間の共有を目指している。
著書に、「ストレス免疫力」を高める こころヨガ 青春出版社 DVD出演に、股関節をひらくためのシークエンス~極楽鳥のポーズ~【エクゼクティブ・ディレクターヤスシ 監修・指導】