Interview

【ララ・ベヌーシス先生】自分が持つ知識を惜しみなく共有してくれる人を求めて



キッズ向けヨガプログラム[ナマスティーン(namasteens)] の創始者で、現在はNY市で権威あるメモリアル スローン ケタリング癌センターでマネージャーを務めるララ・ベヌーシス先生。ヨガインストラクターになる前には、ダンサー、アイススケーターとして活躍されていたそうですが、どんなところが魅力だったのでしょう? ヨガとの出会いは? なぜがん患者さんのためのヨガプログラムを研究するようになったのでしょう? そして、どんなことを大切にしているのでしょうか。10個の質問を聞いてみました。

1.どんな子ども時代を過ごしましたか? ヨガもしていたそうですね?

どちらかというとおとなしめながら、クリエイティブな子どもだったと思います。
父親がネイティブアメリカン居留地でヘルスサービスを提供する仕事をしていた関係で、サウスダコダで育ちました。ブラックヒルズに住んでおり、文化と自然の両方を楽しめる環境でした。当時一番怖かったのは、ガラガラヘビです!
ヨガは母から影響を受けました。母は私が生まれる前からヨガをしていましたが、私が3歳の頃に多発性硬化症(MS)と診断され、それ以降真剣にヨガをするようになりました。3歳か4歳の頃には朝早く起きて、母とヨガの練習をしたのを覚えています。よく覚えている母と一緒にした最初のポーズはツリー(木)とロータスのポーズです。
12歳になった頃、幸運にも瞑想の先生に出会い、それ以来20年以上学び続け、今でもその先生とは連絡を取り合っています。
 
2.ダンサーやアイススケーターとして活躍されていたそうですね?


私はモダンダンサーでした。ノースカロライナ州立芸術大学(UNCS:University of North Carolina School of the Art)でDick KuchとDick Gainの元で学び、そのあとニューヨーク州立大学(SUNY:State University of NY)でダンスを専攻しました。SUNYに進学した理由は、アカデミックな意味でもいいプログラムで、またダンスプログラムとしても進学校だったことです。
入学の際はもちろん、入学後も毎年卒業までオーディションを受け続けてパスしなければなりませんでした。またダンスに加えて、サイエンスも学びました。ダンスとサイエンスの両方をバランスよく学べたことには感謝しています。最初の学期で基礎的な解剖学クラスを受講できたので、当時の医大予科生と共に学ぶことができたのです。
そのほかに、スポーツとして、アイススケート競技をしていました。私はスケートのトレーニングの厳しさが好きでした。

3.国際ヨガセラピスト協会は、どのような活動をしているのでしょうか?


国際ヨガセラピスト協会(IAYT:International Association of Yoga Therapists)はヨガ組織としてアメリカをベースに数年前に設立されました。毎年2回集会があり、1回はヨガのリサーチャー向けで、もう一回はヨガ講師向けです。
今IAYTにとってとても大切な時期にきています。ヘルスケア業界でのヨガの統合をサポートするため、ヨガコミュニティに新しいアクレディテーション(外部機関からの品質保証)を導入しているからです。


4.がん患者のためのヨガプログラムをするようになったきっかけはなんですか?


病院のディレクターからヘッドハントされたのが始まりです。わたしはもともと、10年以上にわたって慢性的な健康上の条件がある生徒たちに向けて、NYのいくつかの医科大学で教えていました。また、ヨガの講師として病院でも教えていたことがあったので、病院の環境には慣れていたと思います。
メモリアル スローン ケタリング癌センター(Memorial Sloan Kettering)のチームに、初のフルタイムのヨガ講師として働きませんかとディレクターが声をかけてくれたのは、モチベーションと意志の強さ、そして繊細さのバランスがとてもよいからだということを聞きました。



5.がん患者さんに、ヨガはどんないい影響をもたらすのでしょう?


がん患者はサポートを必要としています。彼らは、治療の間もその後も、長きにわたって身体的・精神的・社会的に補助を必要としています。がん患者の30~50%は、がんを発病後、数年間に渡ってかなり身体的に疲れ、苦しんでいると報告されています。
ヨガは、がん治療の時、および治療の後にも、患者のためになる数多くのメリットをひとつにあわせもっているといえるでしょう。なぜならヨガは、精神的で、スピリチュアルな経験とフィジカルな実践を結合しているからです。がんの治療中やその後の患者にとって特にグループクラスは重要で、グループの一員であるという連帯感が心の拠り所となります。
私は、最新の研究や臨床のアプローチに精通することができました。一緒に働いた医者やセラピストが、病院での私のヨガクラスを患者とともに見守り、また自分自身の健康と精神的な支えの為に私のクラスを受講してくれたおかげです。私は彼らと共に働いたことによって多くのことを学びました。
多くの医療システムでは、がん患者に提供できる手段が制限されていながらも、医師たちは、患者が生存に役立つ可能性のあるすべての手段を探そうとするモチベーションがあることに気づいています。私はコロンビア大学の一番上の教授と共に学ぶことで、がん患者を助けるアプローチを開発し続けてきました。


ヨガは、がん患者に複数の効能をもたらす比較的安全なアクティヴィティー(運動)と言えます。私の目的は、日本のインストラクターに、自分たちのコミュニティにいる患者や生徒たちをサポートする為に役立つ臨床の情報を提供することです。私はコロンビア大学で過去数年間、癌の発生(タイプや発生率)が他の国とは異なるという点で日本でどれほど独自であるかを研究しました。この情報を共有することで、インストラクターががんのためのヨガプログラムにその情報を適応し、役立てることができると考えています。



がん患者を助けるということは、世界のどこであってもチームワークにかかっています。私たちのアプローチを洗練し患者に最も有益なプログラムを提供できるように、がん患者やお互いの努力を助けあわなければなりません。がん患者を助けるには、時間も情報源もあまりにも限られています。
ヨガコミュニティは非常に競争が激しい傾向にありますが、世界レベルのコミュニティとしてヘルスケアを最大化することに協力し合うことには繋がっていません。がん患者に対し、手を差し伸べる最良の方法を一緒に議論する必要があります。ヨガインストラクターは複数の癌のタイプやその治療法に精通した人に訓練されることがまだまだ重要で、生徒を安全に保ち彼らにとって最大限の効果を目指す必要があります。日本でこういったことについて情報を共有できることを楽しみにしています。

6.ヨガティーチャー、ピラティスインストラクター、パーソナルトレーナー、人間工学に基づいたアセスメントの資格など、多彩な顔をお持ちですが、勉強したり深めたりするときには、どのようなモチベーションを持っていますか?

私は、自分が学ぶ先生については、そのテーマの重要性、奥深さをよく知り、自分が持つ知識については惜しみなく共有してくれる人を求めています。人気があるかより、本物かどうかの方が大切です。



また一方で、私は誰からでも学ぶことは可能だとも思っています。私の講師としての強い信念のひとつは、少なくても週1回は自分が生徒として学ぶ機会を作ることです。例えば日本を訪れた際には、私をスタジオ・ヨギーのクラスで見かけることがあるでしょう。それは生徒としてクラス受講することで、いつも何か新しいことを学べるからです。
私はヨギーでクラス受講することが大好きです。講師の皆さんがそれぞれユニークな強みを持っているからです。数年に渡り、コミュニティの中で成長していく彼女たちを見て、それをサポートできることがうれしいです。個人的にもスタジオ・ヨギーの持つコミュニティはとてもポジティブだと思っていて、会社として日本のウェルネスや健康の発展をサポートしていることが大変価値があると思っています。私たちみんなが、もっとヨガを必要としているのです!

7.現在のお仕事を100%で表現するとどんな割合になりますか? ヨガ講師(インストラクター養成)、一般の方にヨガを教えている時間、メモリアル スローン ケタリング癌センターでマネージャーを務める時間、などされていますが。

ヨガ講師40%、病院勤務30%、大学院でのラボ活動20%、そして睡眠10%です!
私の人生でも今が最も忙しい時期ですから、これだけが私だとは思わないでくださいね。ただコロンビア大学の教授陣から学ぶことと、生徒さんと働き続けることに私は今尽くしています。心の底から、朝起きてから今やっていることが好きです。もし余分に時間があれば、勉強やリサーチの時間にあてています。

8.1日をどんなふうに過ごしていますか? お忙しそうなので、睡眠時間が少なさそうなイメージがあります。

なるべく毎日7~9時間睡眠をとりたいとは思っています。これはみなさんにもお勧めしますが、私はちょっとした昼寝をするのがとても得意です。それから逆転のポーズは、エネルギーを高く保つのに有効だと思います。


9.OFFではどんなことをして過ごすのが好きですか?


冬は料理、夏はビーチに行くのが好きです。それからNYの歴史の大ファンなので、もしみなさんがこちらにいらっしゃる際は、ストリート毎の歴史をお話できます!



10.今後、力を入れていきたいことは何ですか?


まずは、PhD(博士課程)を修了しようと思っています。メモリアル スローン ケタリング癌センターで次のヨガリサーチに関する論文を11月にシカゴで行われるカンファレンスで発表します。そしてまたいくつか個人としての出版も予定しており、執筆中です。

それから雑誌のコンサルタントもしています。主に科学的な内容についてサポートしていて、これは本当に楽しいです!来年5月までには別のリサーチプロジェクトを進めており、こちらはヨガとがんの関係について、多くの疑問に答えられる内容になるでしょう。


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ララ・ベヌーシス先生が2018年7~8月に来日します。
<<来日情報ページでも随時お知らせいたします。

キッズヨガ・ティーチャートレーニングコース(5日間)

・7/14~16 名古屋グローバルゲートスタジオ

~がん患者、友人、家族のためのヨガを学ぶ~
サイエンス・オブ・ヨガ~がん患者のためのヨガ~3日間コース
・7/20~22 OSAKAスタジオ
・8/6~8 新宿WESTスタジオ

医療的な見地からヨガを学ぶ
Body Map~ヨガの医療的アプローチを学ぶ~
・7/28~30 新宿WEST
・8/10~12 福岡スタジオ

ララ・ベヌーシス Lara Benusis
キッズ向けヨガプログラム[ナマスティーン(namasteens)] の創始者で、ニューヨーク在住。1996年ヨガ講師として認定を受け、ヨガアライアンスの最高レベル、E-RYT 500、RCYTの資格を2001年に取得。ピラティス、パーソナルトレーニング、人間工学に基づいたアセスメントの資格を持つ。国際ヨガセラピスト協会に所属し、がん患者のためのエクササイズ スペシャリストでもある。ニューヨーク市の教育委員会、チルドレン・エイド・ソサエティ、人気スタジオ、ピュアヨガ、エクイノックスなどのカリキュラム、ヨガリサーチのプロトコールなどを制作。ヨガ指導を専業とする前は、プロフェッショナルダンサーでありアイススケーターとしても活躍。20,000時間以上のヨガ指導歴があり、健康に関する講義を世界各国で行う。ルルレモンのインターナショナルアンバサダーを3度務め、現在はニューヨーク市で権威あるメモリアル スローン ケタリング癌センターでマネージャーを務める。