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アーユルヴェーダとヨガのつながり 2/2



ヨガとアーユルヴェーダの根底には、個の生命を超えた癒しがある

さらに、アーユルヴェーダは病気の治療だけでなく、幸福で長生きするための方法がチャラカサンヒターに説かれています。

「まず幸福な人生というのは、精神と肉体共に病気に侵されていない人、若々しく、能力にふさわしい体力、勇気、名声、優れた行為、大胆さを持っている人。知識、学問、元気な感覚器官があり、それぞれの対象がある人。富と楽しみがあり、自由に行動できる人。このような人の人生は幸福で、そうでない人は不幸な人生である。」 (チャラカサンヒター1巻30章24節)

これは、個人の健康や生きる楽しみ喜びについて説かれていますが、有益な人生、不幸な人生という説明は社会の中で生きるうえでの心身の健康について説かれています。

「有益な人生というのは、すべての生類の幸せを望む人。他人の財産を欲しがらない人。真実を語る人。平和を求める人。よく調べて行動し軽率な行動をしない人。人生の3つの目的(ダルマ、アルタ、カーマ)である義務を果たし、財を得て、望みを満足させることを矛盾しないように行動する人。尊敬すべき人を尊敬する人。知識と学問と平和を自分のものとしている人。年寄をいたわる人。自分の愛着、怒り、憎しみ、自慢、わがままをよく自制する人。瞑想をし、善い知識をもち平静に生きる人。哲学を知り、それに専念する人。この世とあの世の両方を考えている人。記憶力と知性を持つ人。このような人の人生は有益な人生であり、反する人の人生は無益な人生である」と説かれています。(1巻30章24節)



このように社会の一員、地球に生きる一員として生きるうえでの健康について語られていますが、これはヨーガの8支則(禁戒・勧戒・アーサナ・調息・制感・集中・瞑想・三昧)の実践ともつながっています。社会の中で生きる個人の健康は社会へ影響し、生命が生きる場(社会、自然界、宇宙)の健康状態もそこで生きる生類に様々なかたちで影響しています。

人間だけでなく他の生命への思いやり、慈しみをもって話し、行動してゆくことが自分の人生に関係し、同時に周囲への影響もある。自分に問いかけると「そう言う事あるなぁ・・・」と思い当たることいくつもありますね。

ひとりひとりの喜び・健康・幸福は、社会・自然界・宇宙の喜び・健康・幸福であり相互に影響し響きあっているのではないでしょうか。

アーユルヴェーダもヨガも、幸福な人生を送るための実践法

さらに、ヨーガの祖パタンジャリへの祈りの中にもアーユルヴェーダとヨーガのつながりを語る言葉があります。
「ヨーガの教えによって心の汚れをとりのぞき
 アーユルヴェーダによって身体の汚れをとりのぞき
 サンスクリット文法によって言葉の汚れをとりのぞく・・・」

この1節も深く響き喜びと共に共鳴し続けている忘れられない祈りの言葉です。
ヨーガとアーユルヴェーダだけでなく、サンスクリット文法によって身口意の過ち、こだわり、汚れをとりのぞき、清らかにし生命の癒しにつながっていると感じました。



人間は心と肉体と魂の結合といわれています。生命が生き続けている間ずっと心の働き、身体の働きがあり様々な体験をしています。心と身体は常に影響しあっています。

アーユヴェーダの目的は健康を維持して、さらに増進すること。人間としてこの世に生まれその命を全うするために、喜びを味わい幸福で有益な人生を過ごすには、ヨーガの教えを実践すること、アーユルヴェーダで健康の維持増進をすること共にサンスクリット文法で考え方や思い込み、言葉の誤りをただすことも、身口意において欠かせないということが語られています。

遥か昔から涸れることなく伝わっている叡智を今ここでそれらに触れることができる、素晴らしい教えを学び実践するタイミングを得られたことは、恵みですね。

前編:アーユルヴェーダは、ヨーガ修行者が得た智慧

新宅  昭江 (しんたく あきえ)
アーユルヴェーダ講師。
アーユルヴェーダの薬理・薬草学を学んでからより身近なハーブに興味がわきメディカルハーブの勉強を始める。植物の持つ深い癒やしの力に気づき、日々の生活に簡単に取り入れる方法をアーユルヴェーダやハーブの講座で紹介している。ヨガ療法・アーユルヴェーダ・植物療法などの勉強を続けながら様々な分野で癒やしを行う方々、自然療法に関心があるドクターの皆さまと協力しながらホリス ティックな癒やしを伝えて、だれもが自分に合ったヒーリングプログラムを体験出来る、そのような癒やしの場ができたらいいなぁと願っています。


・日本メディカルハーブ協会認定 ハーバルセラピスト
・日本アーユルヴェーダ学会会員