アーユルヴェーダは、ヨーガ修行者が得た智慧
アーユヴェーダとヨガは真の生命科学の一族です。共に古代インド発祥で、自然界を大宇宙、そこで生きる人間を小宇宙ととらえ、人間の命は心、身体、魂が鼎(かなえ)のようにつながって生きていると考えています。
健康や幸福を考える時には、心・身体・魂へのアプローチが必要で、その際自分のことだけではなく他の生命、周りとの調和を考えると真の調和、平安につながってゆきます。
アーユヴェーダとヨガを共に実践してゆくことは誰もが日常で出来る真の健康、幸福の道だと思います。
アーユルヴェーダとヨガのつながりの由縁を古典書とヨーガの祖のエピソードの中からご紹介したいと思います。
古代インド発祥のアーユルヴェーダは総合的な医学体系です。その目的は、「健康な人の健康を守り、病気の人の病気を鎮静すること」と古典書チャラカサンヒターに記されています。
チャラカサンヒターには、アーユルヴェーダがこの世にもたらされたエピソードが次のようにあります。
「人々に苦しみをもたらす病気がこの世に現れた時に、人間を救おうという慈悲深い聖仙方はヒマラヤの中腹に集まり病気を鎮静するための検討を行った」とあります。彼らは真聖な知識(ブラフマジュニャーナ)と禁戒(ヤマ)と勧戒(ニヤマ)の実践者です。
病気が現れると健康を損なうだけでなく、満たされた日々の生活や人生そのものを妨げるので、病気を鎮静するにはどのような方法があるのかを知るために、聖仙方は修行し深い瞑想に入いりアーユルヴェーダを覚知しました。
このようにヨーガの修行者たちによって、この世にアーユルヴェーダの叡智がもたらされ、現在でも健康の維持増進、生活法、病気の治療や予防に活かされています。アーユルヴェーダの誕生は、人々の苦しみを救おうというヨーガの修行者の慈しみがきっかけとなっていることからヨーガとアーユルヴェーダのつながりがわかります。
私は、アーユルヴェーダスクールで学んでいた時、この節を知った時にとても納得してうれしくて印象に残ったのを覚えています。自分がもっと知りたい、学びたい一心だったアーユルヴェーダは、人間に対してだけでなくあらゆる生類への深い慈しみが根底にありそこから始まった生命学で、それはヨーガの修行を続けている聖者の皆さまの人類への思いが満ちているように感じました。
遥か昔(アーユルヴェーダが誕生するずっと前のこと)病気や苦しみ、怒りや嫉妬、争いなど全くなかった時代があったそうです。その時代は平安で、そこで暮らす人々は常に他の人を思いやり、徳が高く、苦しみがなく穏やかに満たされて、とても長い寿命を生きていたそうです。そのような時代が過ぎ、人々に貪欲、怠惰、怒りや妬み、心配や不安感が現れると不調や病気が発症し、同時に争いや不道徳な行為が起き環境の悪化、天候不順、食料難など世の中も不安定になったといわれています。
現代も数え切れないほどの不安材料があると思います。そのような中でヨガを生活に取り入れている人がどんどん増えているのは自然なことで、個人の心身のバランスや健康を考えてはもちろんのこと、世の中の調和、平安を求めている、また未来へ手渡してゆく思いがあるからだと思います。
後編:
アーユルヴェーダもヨガも、幸福な人生を送るための実践法 につづく
新宅 昭江 (しんたく あきえ)
アーユルヴェーダ講師。
アーユルヴェーダの薬理・薬草学を学んでからより身近なハーブに興味がわきメディカルハーブの勉強を始める。植物の持つ深い癒やしの力に気づき、日々の生活に簡単に取り入れる方法をアーユルヴェーダやハーブの講座で紹介している。ヨガ療法・アーユルヴェーダ・植物療法などの勉強を続けながら様々な分野で癒やしを行う方々、自然療法に関心があるドクターの皆さまと協力しながらホリス ティックな癒やしを伝えて、だれもが自分に合ったヒーリングプログラムを体験出来る、そのような癒やしの場ができたらいいなぁと願っています。
・日本メディカルハーブ協会認定 ハーバルセラピスト
・日本アーユルヴェーダ学会会員