Interview

【中井真吾先生】解剖学ワード“筋膜”ってなに? なぜ注目されているの?

ここ最近、ボディワーカー、各種インストラクターの間で注目されているキーワード『筋膜』。テレビ番組「主治医が見つかる診療所」「世界一受けたい授業」「ガッテン」などでも取り上げられ、『筋膜』をほぐすことで、肩こりや腰痛の改善が見込めると、注目を浴びています。

そこで、理学療法士であり、解剖学講師である中井真吾先生に、注目されている『筋膜』とは、
どういったものなのか、今なぜこの膜が注目されているのか、お伺いしてみました。

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「筋膜って、字そのままで筋肉の膜、なんですが、体全身を覆っているボディスーツとよく言われています。
全身が1枚のスーツなので、ある一部分の動きが悪くなることによって、
別の遠く離れたところに不調が起こることがあります。
そのようなことが、ここ10~20年間に研究されてきて、ようやく注目されてきた、というところなんです。
以前からボディワークのひとつである“ロルフィング® ”がやってきたことではあるんですが、
科学的なメスを入れたっていうのはここ10~20年で、ようやくその波が日本に来ている、と思います。」

──人間が昔から生まれ持っていたものだけど、ようやくその機能が分かりだした、というところなんですね。

「皆さんに知らているトレーニングは、筋力トレーニングやストレッチがあると思いますが、
ストレッチは、実は“筋肉”だけじゃなくて、“筋膜”もよくしていたんじゃないか、みたいなことも、言われています。

たとえとして、野口英世は、黄熱病を研究して原因である細菌を見つけましたよね。
でも、のちに、それは細菌でなくウイルスがあるってことでわかったんですけど、
その当時はウイルスを見る器械がなかったんです。
だから、ウイルスを見つけられなかった。
ウイルスが見られるいろんな技術が発達してきて、
あ、これウイルスだってわかって、野口英世の細菌説は、否定されるんですね。
筋膜もそれと似ていて、筋膜は見えないわけではないけれど、
筋肉と骨とかが注目されていて、認識されてこなかったのかなと。
それがいまになって、“あ、筋膜ってのがあるじゃないか”とビジョンが広がって、
“私たち治療していたのは筋肉とか骨だけじゃなくて、筋膜も一緒に治療してたんじゃないか”
というのがようやく分かってきた。
じゃ、その筋膜について、今後、どのようにアプローチするか、
ちょっとずつ治療法や効果が研究され、明らかになってきてる、という感じなんですよね。」

──筋膜については、これからまだまだ発見がありそうなんですね。

「さらにあと5~10年くらいすると、みなさんのお手元にわかりやすく伝わるんじゃないかと思います。
やっぱり最新研究が出てから、一般化されるのに20年かかるらしいんですよね。
ようやく、日本において(医療科学の面からの)筋膜の専門書の翻訳本が出てきています。
イギリスでは『筋膜ヨガ』という書籍もあるので、筋膜へのアプローチの仕方を
ヨガインストラクターの方々と勉強したいなという気持ちがあります。」

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──ビューティ・ペルヴィス®は、筋膜にアプローチして、全身を調整するメソッドでもありますよね。
そこが科学的に実証されるのは、すごく楽しみです。

「やっぱりkyo先生は、先取りしてるんですよ。すごいんですよ。
だから僕、ビューティ・ペルヴィス®から学んで興味を持ったことはたくさんあります。
僕はいま腰痛の研究室にいるんですが、腰って分厚い筋膜があるんですね。
脊柱起立筋という筋肉を包んでいる筋膜があって、複雑に入り組んでいるんですが、
この部分が、ちゃんとお互い擦れ合って滑らないと、筋肉が収縮してくれない。
腰痛のある人は、筋膜がちゃんと滑走しないので、この筋肉が全然収縮していないですよね。

ちょっと前にTV番組の放送では、この腰部の筋膜に生理食塩水をチューっと注入して、
ばーっと筋膜をはがして滑走できるようにすると、腰痛が一気になくなっちゃう、というのをやっていたんです。
もちろん、それはお医者さんがやっているんです。
ボディワーカー、インストラクターなど僕らにはできないんですけど。
そういうのをkyo先生は、“筋膜へのアプローチ”をすることによって、やっているということになります。
だからここのところにいろんな可能性が、やっぱりあるんじゃないかな、とぼくは思っています。」

──あらゆるボディワーク、トレーニングでも筋膜に注目すると、効果が上がりそうですね。

「ヨガも、全身をひねるようなポーズをとると、筋膜に作用するんじゃないかと言っている方々もいますし、
ピラティスでもなんでもそうなんですが、動き自体がすでに筋膜に訴えかけているんじゃないかと言われています。」

“筋膜”はこれからのものだけに、まだまだ奥が深そうです。
科学現場でも研究が進めば、ヨガ、ピラティス、ビューティ・ペルヴィス®などが
健康のためにより効果があることを示す、ひとつの指針にもなるかもしれません。
中井先生が講師をするワークショップシリーズ「理学療法士・中井真吾の『カラダ塾』」でも、
「筋膜」をテーマにやってみたい、と語っていました。楽しみですね。